家のガスはどこから来たのか。都市ガスとプロパンの歴史と種類の違い
毎日使っているガスですが、どこから来て、なぜ2種類あるのかは意外と知られていません。
この記事は料金の話を少し離れて、ガスの歴史と種類の違いをまとめます。年や数字は、辞典と業界団体の資料で確認できたものだけを書いています。
先にまとめ
| 都市ガス | LPガス(プロパンガス) | |
|---|---|---|
| 主な成分 | メタン(天然ガス) | プロパン・ブタン |
| 空気と比べて | 軽い(上にのぼる) | 重い(床にたまる) |
| 届け方 | 地下の導管 | ボンベを運ぶ |
| 日本での始まり | 1872年(明治5年)横浜のガス灯 | 1929年、飛行船の燃料として初めて使われた |
| もともとのにおい | 無臭(においは付けている) | 無臭(においは付けている) |
都市ガスの始まりは「明かり」だった
横浜・馬車道のガス灯
世界で最初のガス会社は、1812年にロンドンで作られました。
日本のガス事業は、1872年(明治5年)に横浜でガス灯がともったのが始まりです。場所は馬車道の街灯だったとされます。1874年には東京と神戸でもガスの供給が始まり、1885年に東京瓦斯が設立されています。
このころのガスの用途は、料理ではなく照明です。1910年代になると照明は電気に置き換わり、ガスは料理や暖房の燃料として使われるようになりました。
石炭から天然ガスへ
都市ガスの原料は、時代ごとに大きく変わっています。
| 時期 | 原料 |
|---|---|
| 明治〜戦後 | 石炭を蒸し焼きにして作る石炭ガス |
| 1952年〜 | 重油から作るオイルガス |
| 1960年代 | ナフサなど石油系のガスが増える |
| 1969年 | アラスカから液化天然ガス(LNG)の輸入が始まる(1972年にはブルネイからも) |
| 1980年代 | 天然ガスが半分を超える |
| 2010年 | ほぼ全量が天然ガス由来になる |
天然ガスから作る都市ガスでいちばん多く流通しているのは「13A」という規格のガスで、成分の9割ほどがメタンです。
昔の都市ガスには一酸化炭素が入っていた
ここは、あまり知られていない話です。
石炭やナフサから作っていた昔の都市ガスには、一酸化炭素が含まれていました。 一酸化炭素は血液が酸素を運べなくする毒なので、ガスが漏れること自体が中毒の危険につながっていました。
天然ガス由来の今の都市ガスには、一酸化炭素は含まれていません。
ただし、今でも燃やすときに空気が足りないと(不完全燃焼)一酸化炭素が発生します。換気が大切なのは、昔も今も変わりません。
プロパンガスの始まりは「飛行船の燃料」
ツェッペリン伯号
日本で初めてLPガスが使われたのは、1929年、日本に着陸した飛行船「ツェッペリン伯号」の燃料としてでした。
機体を軽くするため、この飛行船は重い液体燃料ではなくガスの燃料を使っていました。アメリカの会社が「パイロファックスガス」という製品を日本に送って燃料にしたのですが、このガスの成分が、後にプロパンだったとわかったのです。
自動車の燃料から家庭へ
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1929年 | ツェッペリン伯号の燃料として、日本で初めて使われる |
| 1938年 | ガソリン不足に備え、自動車の燃料として使うことが認められる |
| 1955年 | 丸善石油・大協石油が国内で生産を始める |
| 1961年 | 輸入船「豪鷲丸」が川崎に入港。LPガス輸入の第1号 |
| 1967年 | 液化石油ガス法(液石法)が成立。販売が許可制になる |
1950年代には需要が急に増えましたが、当時のLPガスは石油を精製したときに出る副産物でした。製油所の都合で量が決まるため、夏は余り、冬は足りないということが続き、それが輸入を始めるきっかけになっています。
事故が増えたことから1967年に液石法ができ、今の保安点検の仕組みにつながっています(安いガス会社に変えると危険なのか)。
今も車の燃料として走っている
LPガスで走る車は、今も全国に約17万台あります。とくにタクシーは、およそ8割がLPガス車です。
プロパンとブタンの違い
LPガスは、プロパンやブタンなど、液体にしやすいガスをまとめた呼び名です。
| プロパン | ブタン | |
|---|---|---|
| 液体から気体になる温度(沸点) | 約マイナス42℃ | 約マイナス0.5℃ |
| 重さ(空気を1としたとき) | 約1.5 | 約2.0 |
沸点の違いは、寒いときに気体になりやすいかどうかの違いです。 ブタンは0℃近くより寒いと液体のまま気体になりにくいのに対し、プロパンはマイナス42℃まで気体になります。
家庭用のLPガスは法律で規格が決められていて、プロパン(とプロピレン)が80%以上のものが「い号」、60%未満のものが「は号」などと分かれています。
ガスが「重い・軽い」で何が変わるか
| 都市ガス(天然ガス) | LPガス | |
|---|---|---|
| 漏れたとき | 上にのぼって広がりやすい | 床の近くにたまりやすい |
| ガス漏れ警報器の位置 | 天井の近く | 床の近く |
LPガスは上の窓を開けただけでは外に出ていきにくいので注意が必要です。漏れたときの対応はガス臭い・警報器が鳴った。今すぐやることにまとめています。警報器の位置で、自分の家がどちらのガスか見分けることもできます(物件を借りる前に、都市ガスかプロパンガスかを確認する)。
ガスのにおいは「後から付けている」
ガスの独特のにおいは、ガスそのもののにおいではありません。
天然ガスもLPガスも、もともとは無臭です。 漏れたときに気づけるように、硫黄を含む化合物をごく少量混ぜて、わざとにおいを付けています。
「ガス臭い」と感じたら、それは付けてあるにおいが働いているということです。
コラム:おならもガスなのか
はい、おならもガスです。しかも家庭のガスと共通点があります。
医師向けの医学書(MSDマニュアル)によると、
- おならには水素・メタン・二酸化炭素が含まれている
- その約75%は、大腸の中の細菌が食べ物を発酵させてできたもの
- においは、硫化水素の濃さと関係している
- 回数は1日13〜21回ほど、量は0.5〜1.5リットルほど(個人差あり)
都市ガスの主成分もメタン、ガスのにおいも硫黄を含む化合物です。成分とにおいの元が、少しずつ似ているわけです。
ちなみに、おならの水素やメタンは燃える性質がありますが、同じ医学書には「火の近くで作業しても危険ではない」と書かれています。安心してください。
まとめ
- 都市ガスは明治5年の横浜のガス灯から始まり、原料は石炭→石油→天然ガスと変わってきた
- 昔の都市ガスには一酸化炭素が入っていたが、今の天然ガスには入っていない(不完全燃焼では発生する)
- プロパンガスの国内初使用は1929年の飛行船の燃料。副産物として始まり、1961年に輸入が始まった
- 天然ガスは軽く、LPガスは重い。だから警報器の位置が違う
- ガスはもともと無臭で、においは付けている
都市ガスとプロパンで料金に差が出る理由は、プロパンガスが都市ガスより高くなりやすい理由に書いています。